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住まいのバリアフリーコンペティション

作品概要 ・ 審査講評
最優秀賞
   「かい楽の家」
    滝澤 俊之/滝澤俊之建築設計事務所
概  要 東京都板橋区 / 平成19年6月施工完了 /家族構成:3人(大人2人・子供1人)/施工面積(うちバリアフリー施工面積):130.95u(130.95u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):3,700万円(425万円)
作品概要  8歳のお子さんは、脳性麻痺による四肢麻痺等の障がいをお持ちで、24時間の介護を必要としています。この子にとってこの家は、家族、そして社会との接点となります。私たちは家作りを始めるにあたって、「介護者の負担を少なくすることで、重度障がいのある子供とその親が心地よく、長く一緒に暮らせること」を目標にしました。
要望・配慮点 ・将来の症状の変化を見込みながら、機械化できるものは積極的に導入し、そうした機器と、住宅としての楽しさだったり、安らぎといったこととの調和を図ること。
・外部のスタッフを活用して親の負担を軽減しつつ、プライベート空間とパブリック空間との使い分けが明確にできること。
・常に子供に注意が払えるよう、限られた敷地に対して可能な限り生活が1フロアでまとまるようにすること。
ポイント a.全体
 基本的な生活を1フロアにまとめた2階の居間。正面の框戸が入り口で、ホールから入って左手に洗面台がある。写真手前が高床、向かって左が寝室、右手が台所。リフトのレールと間接照明を並行して走らせ、レールがインテリアに溶け込むように工夫している。天井にフックを設け、スカイチェアを設置できるようにしている。温度変化による体調管理が難しいため、躯体高断熱・高気密化を行い、温度環境をコントロールするとともに、空間を一体で使えるようにしている。
b.台所
 フロアが見渡せる位置に設置。家事をしながら子供の様子が見える。見通しを確保しつつも、介護で手を離せないことが多く、散らかりがちなシンク廻りを隠す為に、収納でゆるく空間を仕切っている。脇の収納には洗濯機を設置している。
c.高床
 お子さんは、座位保持では体に負担がかかるため、寝姿勢が多い。ベッドでは狭く介護しづらいため、床面より介護者の負担が少ない高床を、陽当たりのよい東南の角に設置している。固めのウレタンマットを敷き、清掃性を考慮し、合皮のカバーをしている。将来不要になった場合は高床を撤去できるよう、床勝ちのつくりにしている。高床下は舗装具やおもちゃ等かさばるものの収納に使っている。
d.アプローチ
 道路高さから1階の床高さまでスロープですり付け、車と人が同じアプローチを共有して広く使えるようにしている。自動車後部におおよそ2m、福祉車両から玄関まで車椅子の取り廻しが可能な広さをとっている。玄関横には、車椅子のタイヤ清掃ができるよう水栓を設けている。
e.玄関 
 玄関扉は、タイムストッパーを設けた引き戸にしている。玄関内での車椅子の移乗が可能なように、内外2台分が置ける大きさを確保している。土間から直接エレベーターに乗り込むことができる。天井内にはレール下地の準備をしている。
f.洗面台
 介護者の衛生保持を目的として、使用頻度の高い洗面台を居間に設けている。入室時に外部スタッフが気持ちよく使えるように、紙コップ、ペーパータオル等が、インテリアを損ねないように収納されている。洗面ボウルは雑巾等の下洗いができるよう大きめにしている。下の扉はオムツ用ゴミ箱収納。ワンプッシュで開き、手を洗うまでオムツを替えた手を使わずに済む。臭気防止にダクトファンを設置し、排気している。
g.寝室
 天井いっぱいの間仕切り建具により、日頃は居間と一体の広い空間として使い、来客時は、建具を閉めることによってプライベートを守ることができる。
h.介護リフト
 展示施設などで実物を確認し、比較検討を行い、レールがあるマスの範囲は縦横に動け、移乗時にレールがついてくるので微調整がしやすいXYレール式のものを選択した。リフト本体は一台で家中移動可能で、レールの増設のみでその範囲を拡張できる。電装パーツは本体のみなので、故障の心配が少ない。オフホワイトのレールは角がなく、機械としての硬さが目立たないので、インテリアとの調和がとりやすい。
i.水廻り
 3階脱衣室からエレベーター、浴室を見る。3枚引き戸で間口を広くした脱衣室に、エレベーターから直行できる。入浴介護は、介護者の負担が多く、事故の危険性も高いため、脱衣室、浴室ともXYレールを取り付けた。浴室は、1.5坪タイプで洗い場が最大のユニットバスを選んでいる。脱衣室は、脱衣・着衣を簡易ベッドで行うことも想定した広さを確保している。
講  評

 8歳のお子さんには脳性麻痺による重度の四肢障害がある。このため、介護の負担を軽減するとともに、重度障害がある子どもとその親が心地よく長く一緒に暮らせることを目標に設計を行っている。
 この設計が成功した理由は、1)積極的な機械利用、たとえば住宅用エレベー ターの利用、天井走行式リフトの多用。2)外部のスタッフを活用して親の負担をなくす、そのためにプライベート空間とパブリック空間との明快な分離。3)常に子どもの動きに配慮できる見通しの確保、たとえば、調理台に向かっていても子どもの動きが見えるような配置、などである。
 親のある種の割り切りが子どもの生活をよりよいものにしていると同時に、設 計者もこれに応えて、子どもと家族が抱える問題点を丁寧に受け止めそれを解決しようとした努力の姿勢が随所に見られる。
 この作品の大きな特徴は、2階ののびのびとした平面計画と、3階に水回りを 配した思いきりの良さにある。2階での身体状況を良く把握した上で高床式の畳部分(上面は汚れ防止のためにウレタンマットを敷いている)の設置と将来の撤去を考慮した施工方法、さらにその部分を台所から見渡せる視線の確保、得てして散らかりがちな台所を収納で緩く仕切るアイデア、介護者の衛生保持を目的とした洗面台ときめの細かい配慮がなされている。3階での水回り空間でのリフトによる移動空間の確保、さらに予備室は将来お子さんが大きくなったときの自室として利用することによって、精神的な自立を確立する重要な空間となる。 もうひとつ、天井走行式リフトを設計・施行したことがある者なら、誰でもがこれを住空間の雰囲気になじませるのが大変であることを知っている。
  設計者はこのことに腐心した結果、リフトの影響を最小限にすることに成功している。


優秀賞
   「たくさんのバリアーから解放されのびのびと!」
   設計:江渡 文子 施工:黒澤 浩二/東京ガスリモデリング(株)
概  要 東京都大田区 / 平成17年3月施工完了/家族構成:4人(大人4人(うち高齢者1人)) / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):86u(86u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):1,205万円(1,205万円)
作品概要 ほぼ寝たきりのお母様との同居を機にリフォーム。お母様と介助者にとって「毎日を不都合なく、楽しく生活できること」をコンセプトとした。部屋が細かく区切られて使いにくいため、間取りを変更して家族の寛ぎの場としての空間と、介護を必要とするお母様の生活スペースを融合させた。
要望・配慮点 家族にとっても明るく快適な空間にしたいとご要望された。ケアマネージャーの意見を聞きながら、車椅子の動線や水廻りのプランニングを行なった。
ポイント a.玄関ホールとキッチンを繋げて、車椅子で動きやすいように回遊式の広い一部屋にした。トイレの目隠しにもなっている黄色い壁は、構造壁でアクセントウォールにした。キッチンを対面式にし、常にお母様の様子が分かるようにした。床の段差は全て解消。温度のバリアフリーを考慮し、床暖房や浴室暖房を入れた。
b.寝室の出入口は、車椅子が直線でゆったり出入り出来るよう片開き戸と片引き戸の組み合わせにした。LDKと一体化が可能なため、お互いの気配を感じられ、安心感を得られる。亡くなられたお父様の思い出の品を飾るスペースを設け、お母様がベッドからいつでも眺められるようにした。
c.車椅子で寝室から直接外出できるようウッドデッキのスロープを設けた。庭にガーデンライトを設置し、夜には灯りの癒しの空間になる。
講  評  この作品を見て最初に気がついたことは寝室と食事室との取り合いでした。片引き戸を引いただけでも人の気配を感じる、さらに開き戸を開けることで部屋の一体感がでてくる。設計者が述べているようにともすると孤立しがちな空間に対する配慮への着眼点がよいと思う。また、多分、必然的にでてきた耐力壁を無理なく利用して視線を遮断するためのアクセントとしている点も、散漫になりがちな空間の広まりを逆に押えていることが面白い。ただ、外部空間のウッドデッキの扱いが介助者の年齢性別(年齢不詳)が気になるところである。
「毎日を不都合なく、楽しい生活をしたい」というコンセプトの気持ちが生きている。

優秀賞
   エレベーターを介して「多層階」を自由に回遊する
    −車椅子で都心に自由に住まう−
   山嵜 雅雄/且R嵜雅雄建築研究室
概  要 東京都目黒区 / 平成18年1月施工完了 /家族構成:3人(大人1人・子供1人)/施工面積:166.89u/ 工事費:4,000万円
作品概要 都内の閑静な住宅街の一角に位置する22坪強の敷地に建つ新築の住宅である。家族三人が生活し、駐車スペースを確保・・・という条件。都心の住宅の「多層階」構成である。車椅子での生活の快適さを確保しつつ、いかにそれを空間の楽しさに成しえることができるか・・・・。家族全員にとって快適な家でなければ、生活空間を新しく得るための様々な努力は意味がないものとなってしまう・・・・。という建主の想いに、このプランはある程度応えられたのではないだろうか。
要望・配慮点

 下肢不自由のため車椅子を利用するご主人の移動を考え、ホームエレベーター設置を基本方針として空間構成を検討した。階段は上下移動の副導線とし、床面積を有効に活用するため、階段は全て外部に設け建築面積対象除外とした。
また、非常時の車椅子での避難を考え、この階段の両脇にはスロープ部を設け、勾配もレイアウト上で可能な限り緩くしている。回遊性は車椅子で生活する上で重要な 検討要素とし、単に移動の為のスペースを増やすのでは無く快適な住空間とすることに主眼をおいた。もちろん、どの空間へも車椅子での移動が可能なモデュールで構成しており、手摺りの高さ、カウンターの位置、浴室の腰掛けなど全てに置いて車いすを持ち込み、ご主人と検証し決定している。  

ポイント a.都市型の、「多層階」構成の新築住宅である。ご主人が車椅子を使用しておられるが、基本計画より車椅子の使用が条件であった。誰もがバリアのない普通の生活をおくるアイテムとしてホームエレベーターを採用した。ホームエレベーターの採用でどの階層への移動も自由にストレス無く行うことが出来る。
b.車椅子を使用するに当たり、行き止りや、回転させて方向転換をするという
行為は、無用なスペースをつくりだす。各階層とも基本的な考え方は同じだが、 特にご主人の使用頻度の高い地階のプライベートスペースは、回遊性重要視し、一方向へ移動すれば希望の場所へ行けるように計画している。
c.浴室は、ご主人が独力で入りやすいように計画した。既製品の3本引き戸を使用し、扉を引きそのレールをまたぐ様に室内外の腰掛けがつながる。可動脱衣台を設けている。脱衣場の脱衣台(奥行=850mm)に車椅子から身体を乗せ換え、にじり進みで洗い台へと移動することで補助無しでの入浴が可能とな った。
d.特に地階に設けたトイレは、ご主人が使用し奥様が介助し易い様、何度も現地で検証し、医療器具の収納や、手摺りの位置、カウンターの高さなど、ご主人のスケールに合わせ設計している。
e.主導線がエレベーターなので階段は上下移動の副動線となる。床面積を有効に活用するため、階段は全て外部に設け建築面積対象外とし居住空間を広く取った。また、非常時の車椅子での避難を考え、この階段の両脇には車椅子の幅に合わせたスロープを設け中央の踏み板は健常者の昇降、スロープは車椅子の昇降に利用できる用設計している。勾配もレイアウト上で可能な限り緩くした。
講  評  22坪の敷地を車いす使用者の夫と健常な妻、娘の3人家族の設計となるとどうしても多層階とならざるを得ない。地下1階に夫婦の寝室と水回り、1階に駐車スペースと玄関・ELV、2階にキッチンとリビングダイニング、3階に娘さんの居室を配した結果、車いす使用者が各階に移動できるようにするためにはELVが重要な役割を果たすことになる。そこで設計者は思い切って(当然施主の了解を求めてのことだろうが)外階段とすることによって建築面積対象外とし、空間の効率的活用を図った。 
 併せて、各階の移動を容易にするために車いす使用を可能ならしめるモデュールを採用し、住宅全体のバリアフリー化を実現した。夫婦には二人で使用できる書斎があり、また、3人で使用できるキッチンがあるなど充実した住空間づくりに挑戦している。ただ、緩やかな階段の両端に設置したスロープ部分を非常時には利用できるようにしているが、かなり危険を伴うのではないか?
 「ご主人の知らない空間はない」という設計者の最後の一言は印象的。

優秀賞
   「一人暮らしを価値あるバリアフリーライフへ
〜難病に負けない自立に向けたバリアフリー化を目指す!〜」
   松浦 高寛/イー・ライフ・グループ(株)
概  要 東京都文京区 / 平成19年2月施工完了/家族構成:1人(大人1) / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):10u(10u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):350万円(350万円)
作品概要  A様邸の改修内容は水廻り設備(トイレ、浴室、洗面脱衣所)の交換と、水廻りからリビングまでの動線にある床の段差解消が主な内容でした。マンションの構造上、全ての床をフラットにする事が不可能だったため、水廻りの床のレベルを統一にし、リビングの出入口までの動線上をスロープにすることで車椅子でも移動が容易に行えるようにしました。
  プラン作成にあたり、A様の病気は進行性疾患であることを深く理解したうえで細部まで亘る動作確認を繰り返しました。A様は体調の良い時は自立歩行が可能ですが、悪い時は電動車椅子を利用します。そのために状態に応じて歩行と車椅子を使い分け、残存機能を極力低下させないようにし、さらにどちらでも使い勝手が良くなるよう心掛けてプランをたてました。なかでも特にA様の「歩く」気力を向上させることを意識しました。
要望・配慮点 ・一人でもお風呂やトイレに行けるように床の段差を無くしてほしい。
・今の動線を大きく変えることなく間取りを改修してほしい。
・自分の病気(進行性疾患)を考慮したうえでプランをたててほしい。
ポイント a.INAX製シャワードバス。上下のノズルから霧噴射状のお湯が出るため全 身を温めることができます。これにより以前よりも快適で楽な入浴が行え、週間の入浴回数が増えました。
b. 改修後のシャワールーム。浴槽部分がなくなったことで脱衣スペースが広 がり車椅子に乗った状態でも脱衣や方向転換が容易になりました。また浴室出入り口の段差を解消し出入り口に手摺りを設置したことで体勢を保持したまま車椅子からシャワールームへの入浴が一人でも安全に行えるようになりました。
c. 玄関側から見たリビング出入口。改修後のリビングと廊下の床は、スロー プによりフラットになっています。スロープの角度や廊下(踊り場)の幅等、A様の歩行時と車椅子使用時のそれぞれの動作確認を徹底し、mm単位にまでこだわり設定しました・
d.リビング側からみた玄関と脱衣所出入口、横手摺りの高さはA様の身体状態に合わせ、床から1100mmの位置に設定。それにより安定した歩行が可能になりました。また玄関の段差はそのまま残し、外出の際に使う手摺りを設置しました。それによりヘルパーさんと一緒に外出するときは、安全に上がり框を昇降できます。手摺りの取付位置は、経験と勘で設定するのではなく、科学的根拠に基づき弊社の歩行測定器を用いてA様の歩行が一番安定する位置に設定しました。
e.リビング出入口用ドアとスロープ。車椅子に乗った状態でスロープを上り下りするときにはドアが閉まった状態でスロープを下るのは危険なため、廊下(踊り場)で壁に設置した開閉リモコンでドアを開けることにより安全にリビングへ入れるようになっています。
f.脱衣場出入口の段差が解消されたことにより車椅子に乗った状態でも安全に洗面所へアプローチできるようになりました。さらに新しく設置した洗面化粧台は車椅子に乗った状態でも使用する事ができるため、洗顔や髭剃りが安全に行えるようになりました。
g.タンクレストイレに交換したことで以前より広くなったトイレルーム。背もたれを設置したことで便器に座った際のA様の不安定な動作を改善することができました。さらに手の届く位置に手洗い器を設置したことで座位のままでも手洗いができるようになりました。トイレ改修のプランニングのときに車椅子もアプローチできるようトイレルームを拡張するか否かが一番の難題となりましたが、A様のご家族とA様の残存機能や病気の将来性を考慮した結果、トイレ出入口からは手摺りを使用し立位歩行で便器へアプローチするのが最善という結論に至りました。
講  評  集合住宅における水廻り部分の床面のフラット化は、築年数が経った物件ほど構造上難しい。
  当作品は築35年(RC造)の物件であるが、水廻りの床面を全体的に上げることでフラット化し、水廻りとリビング間に出来た段差を、廊下の奥行きを広げ、緩やかなスロープを設けることで解消し、車いすでも水廻りの利用を可能にしたアイデアとチャレンジ精神が評価された。
 水廻りの床のかさ上げで廊下と玄関部との高低差が増えたデメリットはあるものの、施主と共にシミュレーションを重ね、トイレの背もたれや手洗い器の設置など疾患及びご本人の身体状況の特徴に配慮し、コストを抑えつつ施主の意向を最大限に生かす姿勢を評価したい。

優秀賞
  「娘と家族みんなの家」
  宮下 知也/宮下知也建築設計室
概  要 東京都杉並区 / 平成15年12月施工完了/家族構成:5人(大人2人、子供3人)/ 施工面積(うちバリアフリー施工面積):140u(80u)/ 工事費:3,200万円
作品概要  四肢マヒの障害を持つ娘さんを、十数年育て、介護してきたご両親の、今までの体験による「本当の意味でのバリアフリー」。2人の兄妹も含めた家族が、楽しく過ごせる「家族みんなにとって快適な住まい」。この2点をコンセプトに行った、建替えです。 1階に、家族の集うLDK、娘さんの寝室、家族も使う、脱衣・浴室・WCを配し、介護用の天井走行リフターを効率的に使える事を念頭に置いた平面計画とし、一つ一つ打合せと検討の結果完成させた一軒です。
要望・配慮点  年齢を重ねるご両親と、成人間近の娘さん。介護の負担を軽くし、少しでも娘さんの自立を促せる「家」を要望。介護施設機器の設置に配慮した平面計画から始まり、限られた娘さんの出来る事を反映させる為、状況に合わせ、一つ一つ検証しながらの決定となりました。
ポイント a.介護エリアレイアウト
 介護エリアは、家族の集うLDKに隣接して設け、ドアを大型の引戸にする事で、食事・団欒は車椅子に乗って移動。又、ベッドから天井走行リフターによってトイレ、洗面脱衣、浴室への移動を容易にする様配慮。又玄関ホールから水廻りへのドアも大型引戸とし、1階での回遊性、又帰宅時の対応等に配慮しました。スイッチ類も全て車椅子から操作できる高さとしています。
b.玄関廻り
 外部は、悪天候時の、車の乗降の為に大型庇を設け、駐車場から玄関までは水勾配のみ、屋内に雨水が浸入しないよう玄関引戸の外側には排水溝を設けました。内部は、屋外と屋内用の車椅子の乗換えの為、通常より広いスペースをとり、自力での移動も可能な様、スロープを設けました。
c.室内
 1階に設けた扉は、車椅子に配慮して最低W1100で設計しました。床仕上げについては車椅子使用時と、這う時の肌触りから表面加工したフローリングを選択。ホール等、埃で傷付き易い場所は店舗重歩行用の樹脂系床材とし、幅木は車椅子を考慮し、下地補強の上、医療機関用のH350としています。
d.水廻り
 天井走行リフターを効率よく使う為の配慮となっています。又、車椅子での「ひとり洗顔」を目指し、寝室から水廻りエリアへのドアは天井一杯の引分オートドアを採用しました。トイレ選択については、座位での安定感を第一に考え一般サイズの便座を選択。ウォシュレットのスイッチも手摺に手をかけて押せる位置を、確認しながら取り付けました。手摺については、両側手摺としましたが、片側は介護の為、跳ね上げ式としました。
e.浴室
 介護補助によるリフトでの入浴、車椅子での洗体が基本の為、天井走行リフトのレールを通す天井一杯の大型扉を設け、足元の段差は無し。浴室引戸の、浴室側に排水溝を設けました。浴室専用車椅子の設置スペースも考え、広々とした浴室となっています。又、浴槽は滑り込みの無いよう、高齢者配慮のものを選んであります。
講  評  1階の平面図から察して、家族全体で娘さんのことを考えているなということがひしひしとにじみ出ている住まいだなと感じました。水回りに主力をおいて天井走行式リフトを採用しているが、機械力に頼っているために、ともすると孤立してしまう空間において、家族の集まる居間への開口部と外出のための開口部が上手に配置されて、多分ご本人は電動式車いすを使用していると思いますが、縦横無尽に移動できる動線のなかで、「娘と家族みんなの家」というタイトルに納得がいきました。その他、親御さんの介護負担も相当軽減されていることが伺えました。

住宅金融支援機構賞
   「集合住宅における バリアフリーコード」
   中村 護/扶桑レクセル(株)
概  要  東京都杉並区 / 平成18年11月施工完了 / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):2,352.12u(2,352.12u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):106,680万円(約6,600万円)
作品概要  幼児から高齢者、身体障害者まで多様なフィジカルスタイルに対応するよう、「安全」「安心」「簡単」「便利」「やさしさ」をキーワードに、様々なバリア(=障害)を解消する配慮を施した。これらの配慮はマンションの部位別に細分化して制定され、トータルで251もの配慮に数えられる。
要望・配慮点 住居内の段差を全て無くすために、ミリ単位での施工が求められ、さらにバスルームやバルコニー面のサッシュなどの水廻りは漏水等に十分配慮し、様々な検証を行いながら施工した。
ポイント a. 移動空間におけるバリアフリー
 アプローチから住戸に至る動線には一切の段差を排除し、エントランス、風除室及びエントランス以外の出入口もすべてオートドアとした。また、共用廊下幅を1200mm以上、スロープは1/20とする等の移動空間における配慮も施した。また、住戸内はフラットサッシを用いたり、洗面室との段差を解消するなどフルフラットフロアとし、室内からバルコニーに至るまでの段差を無くした。
b.安心・安全のためのバリアフリー
 エントランスホール床材は素材すべり係数を考慮して選定することとし、さ らに床には視覚障害者のために誘導ブロックを施した。また、怪我をする可能性を考慮し、住戸内の角となる部分には丁寧に面取りを施した。
c.姿勢・動作のためのバリアフリー
 住戸内のスイッチ高さを子供でも使いやすいように1mまで下げ、コンセント位置は腰の負担を軽減するよう40cmまで上げた。住戸玄関、風呂、トイレには手摺を設置し、住戸内廊下には手摺取り付け下地を施してある。また、ちょっとした姿勢や動作への配慮としてトイレはオートトイレを採用。なお、住戸玄関ドア・室内ドアには操作性のよいプッシュプルハンドルを採用し、サッシュには軽いチカラで開け閉めができ、簡単に動かすことができるキックハンドルを採用。
d.光・視バリアフリー
 人が近づくとセンサーが感知する玄関照明を採用。さらに、地震、停電時のために住戸内に感震保安灯を設置。また、建物内の各共用施設については、字の読めないお子様や外国の方でも、視覚的にわかるようサイン計画を行った。
e.温熱バリアフリー
 リラックス効果や体の芯までゆったりと温めてくれるミストサウナ付浴室暖房乾燥機を採用。温風暖房とは異なり床面付近の生活空間が暖かい床暖房を採用。お湯が冷めにくく時間を気にせず好きな時間に入浴できるサーモバスを採用。浴室内の床面は、ヒヤリとした冷たさが軽減されるサーモフロアを採用。また、一定の湿度に保ってくれる効果や断熱性があり夏涼しく、冬暖かい環境となる自然素材を使用。
講  評  早めに入居者を特定できない分譲マンションにおいて、住宅のバリアフリーは幼児から高齢者まで、多世代に必要であるというコンセプトで、幅広く対応している。その内容は、エントランスからはじまる共用空間、さらに住戸内部にまで、<移動><安心安全><姿勢・動作><光・視><温熱>をバリアフリーの要素として、人間の生活行動に細かく配慮しながら、最新の住宅部品や衛生機器、ミストサウナの温熱環境にも及んでいる。高機能性とバリアフリーこの両立をめざし、デザイン性のある快適で豊かな空間を創出している点を評価する。

ベターリビング賞
   「アクティブシニアのための賃貸住宅 グランド・マスターズ武蔵府中」
   佐伯 昭夫/轄イ伯建築設計事務所
概  要 東京都府中市 / 平成19年5月施工完了/家族構成等:35戸(うち管理人住居1戸)) / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):2,222.61u(1.717.88u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):41,475万円(28,945,670円)
作品概要 「まだ老人ホームには行きたくない」、「高齢であっても自立した生活をできるだけ続けたい」、そんな元気で自由なシニアのための賃貸住宅を−というコンセプトからこの建物は誕生しました。3階建マンション(1K・2DK)ですが、ラウンジなどのゆったりした広い共用部を併せ持ち、建物全体がバリアフリー設計となっています。特に1階は車椅子対応フロアとして、各室には車椅子の方でも自立した生活が可能な設備を施しました。高齢者の方でもどなたでも安心・安全に快適な暮らしができる賃貸マンションです。
要望・配慮点  老人ホームや介護施設ではないので、あくまで元気なシニアを対象に、将来の身体の衰えにも安心な、適度なバリアフリー設計を施しました。施主の希望は、「シニアに優しい快適空間、高齢者の方々がもっと生き生きと自分らしく暮らせる環境、楽しく夢を与えるような建物に仕上げて欲しい」ということでした。
ポイント a.エントランスロビー
 車椅子対応のオートロックシステムを装備。建物のエントランスに設置したオートロックシステムの台の部分を、車椅子の方でも楽にパネル操作ができる高さで、ニー・スペースのある形に設計し、御影石と大理石を用いて創作しました。風除室のドアーは、オートロック対応型の自動ドアーを採用しています。
b.共用部のホール・廊下・階段
 段差解消の手摺の設置。建物の門柱からアプローチ、エントランス、そして建物内部全体において段差をなくしました。車椅子の方でも通行しやすい広くゆったりした廊下、階段ホールなどの共用部には、要所ごとに手摺を設置しています。主な手摺の設置場所:エントランスロビー、廊下全体、階段ホール(階段の両サイドに設置)、共用部の「誰でもトイレ&化粧コーナー」など
c.ラウンジ&ウッドデッキ
 高齢者歩行や車椅子に安定性あるオセアーノ・デッキを採用。100年腐らないと言われるジャラ材「オセアーノ・デッキ」。高耐久・超硬質木材なので、高齢者の歩行や車椅子に安心で、いつまでも快適安全な素材を選びました。ラウンジとウッドデッキは、お食事やお茶のサービス、イベント等を愉しむ場として、開放的に段差なくつながっています。(遊歩道にはスロープを設置)まさに「心も体もバリアフリー」を目指したものです。
d.1階 車椅子対応の室内
 引き戸、ニー・スペースのあるIHキッチンや洗面台など。1階は車椅子対応フロアとして、各戸を車椅子の方や杖に頼る足腰の弱い方でも自立した生活が可能なように配慮しました。例えば、@玄関は引き戸 A玄関内に手摺を設置 Bニー・スペースのあるIHキッチン(3戸) Cニー・スペースのある洗面台(3戸) D車椅子での動線を考慮したトイレ・浴室廻りの設計
e.1〜3階 全室共通のバリアフリー生活設備
 IHキッチン、ファブリックフロア、非常連絡装置、手摺、段差解消など。@安全快適なIHキッチン Aファブリックフロア:人体に優しく、汚した部分を簡単に剥がし洗浄できる床材 B緊急呼出しボタン(トイレ・浴室/居室は対話が可能) C赤外線人感センサー自動通報システム Dトイレ・浴室に手摺を設置E温水洗浄トイレ F玄関・室内全ての段差解消
講  評  都心にも近く、多くの自然に恵まれた地に、高齢者専用住宅を一般住戸と共に建設した3階建てのマンションである。1階には、車いす対応を図った高齢者住宅、ラウンジとウッドデッキ、「誰でもトイレ」、2、3階には単身用、小家族用の住宅がある。世代を超えた楽しい交流と支え合い、食事会、高齢者の生活支援等、多くの活用が期待される共有空間があり、エントランスから住宅内部まで広さを確保した各種のバリアフリーで対応している。さらに「高齢者が生き生き暮らせるように、楽しく夢を与えるような住宅を建てて欲しい」と注文した施主のポリシーとそれを実現した建設関係者とのチームワークを高く評価し、地域の中に、このように「心のバリアフリー」を実現した住宅が多く建てられることを願っている。

東京建設業協会賞
   「自分ひとりの力でトイレを使いたい
      〜車椅子で自立して生活できる水回りに〜」
   三井ホームリモデリング゙(株)
概  要  神奈川県横浜市 / 平成19年2月施工完了/家族構成:4人(大人2人、子供2人) / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):63u(10u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):920万円(350万円)
作品概要  下肢麻痺のため車椅子で生活をするお客様から、自分ひとりでトイレや洗面所、浴室を利用できるようにしてほしいとのご要望をいただきリフォームを実施。既存住宅では水回りの空間や出入り口幅が狭く、車椅子での移動が困難であった。
この広さの問題の改善が、このプランの第一のポイントである。同時に、お客様の上肢には健常者と同様の力があることに着目。その能力を活かし、より自立した暮らしを可能とするプランを心掛けた。
要望・配慮点 a.トイレと洗面所を同室とし、スペースを拡大
 b.便座横にベンチと手摺を設置。
c.ニースペースのある洗面台
e.段差を解消し手摺を設けたユニットバス
ポイント a.トイレと洗面所を同室とし、スペースを拡大
 トイレと洗面所を同室にすることによって有効スペースを広げ、車椅子でも十分に移動できる空間をつくり出した。入り口ドアは引戸に変更し、段差を解消した。同居のご家族に配慮し、トイレには目隠しとしてカーテンを設置。床材は、車椅子走行への耐久性や衝撃吸収性を考慮し、医療用長尺シートで施工した。    
b.便座横にベンチと手摺を設置
 車椅子から便座に移動するための仲介スペースとしてベンチを設置。ベンチは、制作前に原寸模型を作成。現場にてお客様に動作のシミュレーションをしていただきながら、取付位置・寸法・座の形状を決定した。さらに上肢の力で移動するための動作に合わせて、手摺(曲げ手摺、縦手摺、L型手摺)を数カ所に取り付けた。
c.ニースペースのある洗面台
 座った状態で洗面ができるよう、ニースペースを備えた洗面台を導入し、車椅子での使用を可能にした。電動ひげそりを洗面台棚内に収納するにあたり、お客様の手の届く棚の中には充電用のコンセントがなかったため、建築工事で棚内にコンセントを取り付けた。
d.段差を解消し手摺を設けたユニットバス
 ユニットバスは出入口に段差のない三枚引戸を採用。独力で体を洗う際の姿勢保持や、車椅子からシャワーチェアに移乗するための動作に合わせ、手摺を水栓上にU字型に取り付けし、さらに浴槽に沿う方向に壁付手摺を設置した。
講  評  「自分ひとりでトイレを使いたい」という施主の思いは、一般的に住宅改修を希望される項目の中でも切実でニーズの高いものの一つである。
 本物件は、近年の集合住宅の水回り部分の間取りとしては典型的なものであったが、トイレと洗面所間の壁の撤去によりスペースを広げ、移動補助のベンチを設けたことにより、単に利便性が向上しただけでなく、明るく広々とした空間が演出されているデザイン性を評価した。その他、トイレと洗面の扉を1つにしたことにより引き戸の使用を可能にした点や多彩な手すりの使用法、ユニットバスの改修に伴い玄関部分も広げ車いすでの生活に配慮した点など、集合住宅の水回りの改修時の参考となる作品である。

東京ガス賞
    「住居内バリアフリーから近隣関係のバリアフリーへ」
    芳賀 敏夫/(有)アトリエラビリンス建築環境設計
概  要 東京都八王子市 / 平成14年6月施工完了 / 家族構成:6人(大人4人(うち高齢者2人)子供2人)/ 施工面積(うちバリアフリー施工面積)144.21u(102.41u)/ 工事費:2,675万円
作品概要  24.8坪の敷地に建つ2世帯住宅で、1階に片麻痺車椅子使用のお父様と介護されるお母様が住み、2〜3階に建主家族が住み、1〜2階をつなぐホームエレベーターが設置されています。木造3階とは思えない、豊かなむくの木質感と、広々とした仕切りの少ない、開放感に溢れた空間です。
1階周りは車椅子用のスロープと段差のない玄関と下町のような近所付き合いがあるので、近所の人が立ち寄れる縁台とが設けてあります。
要望・配慮点 家族を分断しないためのつくりと近隣住民との下町的日常風景の継続という内容について要望を受け、ホームエレベーターや歩道から引き込むスロープの設置、融通無碍な間仕切りや街路樹・生垣の設置等を検討しおこなった。
ポイント

a.1階のスロープに沿ってアカメガシワの生垣があり、このスロープに開けている開口部から車椅子は住居への出入りができる。土間と床の段差はわずか2センチで上り框に傾斜を取っている。
b.1階室(1)〜WC〜浴室間は生活動線として車椅子での移動をスムーズに行えるよう、床面段差をなくし、浴室入り口は3枚引き戸を採用して間口寸法を広めにとっている。
c.浴室へは車椅子で直接進入でき、浴槽と同じ高さの介護スペースを浴槽脇に設けている。また入浴時の出入りがスムーズに行えるよう手摺りを2箇所取り付けている。
d.WCにおける手摺りの設置と、動かすことが可能な側の片手のみで紙を切ることが出来るように紙巻器を手摺り先端に取り付けた。
e.1、2階の中心にはOSBを外周に使用したやさしい表面だが存在感のあるホームエレベーターが設置されている。これは車椅子での上下階移動を楽にし、2階を2家族の集いの場としてくれる。

講  評  1階に片麻痺車いす使用の父親と、介護する母親が住まう、木造3階建ての2世帯住宅である。1階の生活空間は、間仕切りの工夫がされており、寝室や水回りの位置など、車いすで移動しやすい動線が確保されている。また、浴室は浴槽脇に腰掛けられるスペースを設けており、トイレも前面、側面ともにスペースを広くとるなど、介護のし易さが伺える。さらに、ガス温水床暖房を設置することにより、足元からムラのない暖かさが確保でき、車いすの高さでの温度環境に配慮した快適な空間をつくり上げている。
 介護を受けながらの生活は、一般に個室に閉じこもりがちであるが、本設計はホームエレベーターや、スロープ、段差のない玄関など外からのアクセスにも工夫があり、家族・近隣住民とのふれあいを感じることができるバリアフリー設計となっている。
併せて、構造材に製材過程で出た端材の加工製品や、内装材に間伐材を利用するなど、環境に配慮した設計についても評価できる。

東京電力賞
    「光と風と人が遊ぶ家」
    設計:稲垣 弘子/稲垣建築設計室 施主:稲垣 健一
概  要 東京都世田谷区 / 平成18年7月施工完了 /家族構成:3人(大人2人、子供1人)/ 施工面積(うちバリアフリー施工面積):95.9u(70u)/ 工事費:2,400万円
作品概要  古くからの住宅街にある小さな敷地。狭い道路を車が行きかい近隣の建物が接近している典型的な都内の住宅密集地。住み手は30代の若い夫婦と1歳の幼児の3人家族。自然の光と風と暖かさが家中を駆け巡り、大人も子供も楽しめる住まいを計画した。バリアフリーという何らかの障害を持つ人のための住まいと捉えられやすいが、若い健常者の住まいであっても、将来を見据えていつまでも住み続けられる住まいとして、バリアフリーを考えた。長く住み続けられるということは住み手にとっても、住まいにとっても、地球環境にとっても幸せなことであるでしょう。
要望・配慮点 自然の光や暖かさを享受でき何時までも住み続けられる住まいを作りたい。愛情を込めてつくり、大事に楽しく使える住まいにしたいという施主の要望により、高齢者になっても住み続けられるよう設計した。床は段差なしで出来る限り引き戸にし、将来エレベーターが設置できるようベランダの奥行きを広くした。荷物の運搬・ゴミ出しに使用できるリフトを洗面室に設置。安全性に配慮し、オール電化。
ポイント a.居間・食堂・台所
 密集地のため、2階を居住空間とした。リビング・ダイニング・キッチンはワンルームとし、床はすべてフラット。食品庫、洗面室、トイレ入り口はすべて引き戸。レールは床埋め込みVレールを使用。居間はおおきな吹き抜け空間とし、南面の大きな開口のスイングドアとルーバー窓。東面の高窓、西面の床までの細長窓、と階段室の光壁により、視線を気にせず明るく、涼しく、暖かな居住空間を確保。電気床暖房を設置し更に室内生活の快適性を確保した。
b.台所
 アイランド型キッチンは奥行き90cmであり、何処からでも作業が出来る。シンク下はオープンにしゴミ箱置き場に使用しているが、椅子に座っても調理ができる。キャビネットは引き出し式にし、奥のものも簡単に取り出すことが出来る。ダイニング側は引き出し収納と跳ね上げ式のカウンターになっているので、軽食には便利。壁内に収納してあるカウンターは上げると調理台として大勢で使用できる。加熱器具はIHヒーターを使用し安全面にも配慮。
c.ベランダ
  居間に続く南面のベランダは水きりに必要な最小限段差60mm、奥行き1700mmを確保し、居間の延長として使用出来るようインサイドテラス風にスリット壁上の手すりとした。将来の2階へのアプローチのためにエレベーター設置場所にも転用できる。コーナーには収納付きベンチを設置。アウトドアライフも楽しめる。
d.ゴミリフト
 2階リビングの生活は物の運搬、搬出には不便である。毎日のゴミ出しにゴミを持って室内を通るには抵抗がある。台所裏の洗面室に小さなベランダを設け、ゴミリフトを設置した。電動ウインチを使用のため、スイッチを押すだけで、1階に下ろすことが出来る。買い物の荷物もリフトに載せれば、簡単に2階に運ぶことが出来る。
e.洗面所の昇降式物干し器と居間への小窓
  洗面所・トイレ・浴室には連続トップライトを設置、北側でも明るい。雨天の物干しは昇降式物干し器により楽な姿勢で干すことが出来、晴れればトップライトからの太陽光により乾きも早くなる。洗濯機上のスペースに小窓を設置し、家事をしながら居間の様子を伺うことができる。小さな子供や高齢者の見守りには便利。
講  評  30代の若夫婦と1歳のお子さんの3人家族のお住まいである。高齢者や障害者のためのバリアフリー住宅という固定観念から抜け出し、将来を見据え、永く快適に居住できるとともに、地球環境に配慮した作品となっている。
家族が集うリビング・ダイニング・キッチンはワンルームのフラットバリアフリーとし、開口部を広く取ることにより自然光、太陽熱を取り入れられるようになっている。併せて、電気床暖房を設置し、暖かな居住空間を演出している。
 台所シンク下は、将来に備え椅子に座って作業できるスペースを設けている。また、IHヒーターによる加熱器具は高齢になっても安心して使用できる。さらに、電動リフトを利用したゴミ出しの工夫、エレベーター設置を考慮したスペースの確保、オール電化である快適さなど、全体的に住まい手への優しさが感じられる。

東京都都市整備局奨励賞
   「いきいきリフォーム〜ご本人・介護人・ペットのユニバーサルスペース〜」
   伊藤 正敬/セントケア東京(株)
概  要 東京都江東区 / 平成19年7月施工完了 /家族構成:2人(大人2人(うち高齢者2人))/施工面積(うちバリアフリー施工面積):33.49u(約33.49u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):700万円(700万円)
作品概要 ご本人は頚椎損傷による四肢体感機能障害で、生活全般に介助が必要である。車いすでの生活ができるよう、1Fをバリアフリーにリフォームした。ご本人、介護人共リハビリに意欲的であるため、下記をコンセプトとした。
@ご本人にとって、いきいき生活できる空間にリフォームする。
A介護人にとって、いきいき介助できる空間にリフォームする。
Bペットにとって、いきいき同居できる空間にリフォームする。
要望・配慮点 プランするにあたり、家族団らんできるようにしたいという要望があった。そこで、介護スペースの確保を重視し、居室の使用素材に留意した。また、使用できる制度を活用し、なるべく自己負担が少なくなるようにした。
ポイント a.居室空間について
  介護(訪問入浴・看護など)スペースやベッドから車いすへの移乗スペースを確保するため、壁を撤去・床段差を解消し、約30uのワンルームとした。床材はベッドの設置や車いすの移動、ペット(猫)の引っかき傷に強く耐水性に優れた木目調ビニール床タイルを選定。壁材は介護者が清掃をしやすいように耐汚クロスとした。色彩を温かみのあるアースカラーでまとめ、ご本人がリラックスできる空間とした。
b.シャワー・トイレユニット(1420型)について
  訪問入浴やディサービスばかりではなく、自宅でもシャワー浴できるように設置した。ベッドからシャワーキャリーに移乗し、そのままシャワー浴ができるよう動線を確保。3枚引き戸や居室と床段差のないユニットとした。また、ヒートショックのないよう浴室換気暖房乾燥機を取付けた。トイレは介護スペースを確保するためシャワーとのワンユニットとし、移乗しやすいように、跳ね上げ手すりや背もたれを取付けた。
c.居室設備機器について
  洗面化粧台:車いすでもアプローチできるように下部を開放、ボール高さが低
いものを選定した。また、手元でも介助しやすいシャワー水栓とした。
  ミニキッチン:主にお湯を沸かしたり食事を温めるための仕様とし、安全性の高いIHクッキングヒーターとした(調理は2Fのキッチンにて行う。)
  照明:照度が明るいので、ベッドから見ても眩しくないようにリモコンで調光できる。
d.玄関から居室のアプローチについて
  玄関ポーチや上框の段差は、車いすによる外出をしやすくするため、そのときだけスロープを設置することとした。また、レンタルすることで自己負担額を抑えた。居室の出入口は床段差のない引き戸とした。(この部分で介護保険制度の住宅改修給付を受けている。)
e.ホームエレベーターについて
   子供が帰省した時など2Fのリビング・ダイニングで食事や団らんができ、ご本人に生きがいが持てるよう、ホームエレベーターを設置した。鉄骨造の梁やブレスなどの構造体をいじらずに、かつ1Fの玄関から2Fのリビング・ダイニングに直接アプローチする計画とした。
講  評  車いすで生活しやすいよう、1階をバリアフリーリフォームした事例である。ベッドからトイレ・シャワーまでの動線も明快であり、シャワーユニットにすることで、トイレ周りの空間も広く使用でき、本人・介護人ともに使用しやすくなっている。また、ヒートショックのない浴室換気暖房乾燥機の設置や、リモコンで調光できる照明などの設置も、感覚のバリアフリーにも着目した取組であり、通常の段差解消によるバリアフリーから一歩進んだ提案として評価した。
 また、施工に際してバリアフリー改修促進税制の固定資産税減税を活用するなど、公的支援制度を積極的に活用している点も評価できる。


東京都住宅バリアフリー推進協議会 事務局