グランプリ
「自立した生活を送る!」
東京ガスリモデリング株式会社 田伏純子 |
| 概 要 |
神奈川県平塚市 / 平成15年3月施工完了 /家族構成:4人(大人4人(うち障害者1人))/施工面積(うちバリアフリー施工面積):23.19(23.19u)/
工事費(うちバリアフリー工事費):441万円(441万円) |
| 作品概要 |
建築主は、脳幹梗塞を患い後遺症で四肢麻痺のある身障者一級。発語困難ではあるが、パソコンや文字盤を使っての会話は可能。退院に際し、なるべく介助なしの生活が送れるよう自宅をリフォームした。 |
| 要望・配慮点 |
比較的機能の残っている左手を使って生活できるよう、手すりや便器の位置、床材など細部まで綿密に打合せした。生活エリアの全てを車いすで移動できるよう配慮した。 |
| ポイント |
a 電動車いすで外出できるよう、既存のサンルームからカーポートへつながるスロープを新設。リビングダイニングとサンルームの間にあるサッシのレールに板をはめ込んで段差を解消。カーテンの陰から見える手すりで電動車いすに移り、中央の手すりで室内用に戻る。
b 自走式の車いすの場合は1/12が限界だが、外出時は電動車いすを使用するので、スロープの勾配は約1/7とした。
C トイレと洗面脱衣室は電動ロールブラインドを、寝室には電動カーテンを付けて状態に合わせてフレキシブルに仕切れるようにしている。トイレ使用時は電動カーテンを閉めて寝室を取り込み、介助が必要な入浴時にはロールブラインドを上げて脱衣スペースを広く確保。洗濯機は既存のトイレの場所に移して広々した洗面カウンターを設置。
d 浴室は段差をなくし、シャワーチェアーからの移乗のため出入口とシャワーの横に手すりを配置。浴室と洗面脱衣室の天井には、暖房乾燥機を設置して温度のバリアフリーに配慮した。
e 廊下の幅は既存のままですが、寝室とリビングダイニングを囲む壁にぐるりと手すりを回し、ドアの吊元を変えて左手でつかまりながら歩行訓練できるようにしている。 |
| 講 評 |
日本の木造住宅は、建築基準法によって1階の床面が直下の地面から45p以上高くしなければならないことが定められている。車いす使用者にとって見れば、これが住宅の出入りへの大きな支障となっていることが多い。この案でも玄関周辺の狭い場所での段差解消や北側通路幅員を上手く確保できないことから、南側にスロープを設置している。
この解決方法は良く行われるが、今回の受賞作品は、その出入りのためにLDに接して良くデザインされた大きなサンルームを設置したことが大きな特徴となっている。しかも、サンルームは、天井にガラスをはめ込んで十分な採光に配慮し、その結果既存のLDも以前と同じように明るさが十分に確保されている。この案の工夫はこれだけに留まらない。8畳の和室を洋室に改造した寝室と北側に面するサニタリー部分との間に3枚戸を採用することによって往き来のしやすい空間となり、かつ、寝室と一体的に設置した床暖房は、空間の連続性と室温の変化を最小限にしている。さらに、比較的機能が残存している左手を活用してできる限りの自立を心がけていることが建築主の意向を十分に配していると評価された。全体と細部に至るまでのきめ細かな配慮が審査員全員の高い評価となった。 |
優秀賞
「ホームエレベーターで、いきいきリハビリライフ」
株式会社小田急百貨店 リビング、美術、呉服、宝飾部
インテリアサービスDiv 松島直子 |
| 概 要 |
東京都世田谷区 / 平成18年6月施工完了/家族構成:3人(大人3人(うち高齢者1人)) /
施工面積(うちバリアフリー施工面積):155u(150u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):1,500万円(1,000万円) |
| 作品概要 |
2世帯住宅の2・3階に住んでいた建築主は、脳出血による右半身麻痺の後遺症を持つ妻と、頚椎骨折により握力低下等のある夫及び、その介護者である娘さんの3人。以前、転倒骨折し、外出のたびに階段を昇降しなければならないことに不安を感じ、ホームエレべーターの設置を強く希望していた。プランの途中で、1階部分の居住者の移転に伴い、1世帯で3フロア使用可能となり、既存建物に負荷をかけることなく、1方の階段部分にエレベーターを設置した。これまで、2階のLDと隣の寝室しか移動できなかった妻が、1階及び広がった2階のリビングを楽しみながら歩行(リハビリ)している。また、エコキュートを採用し、環境にも配慮した。 |
| 要望・配慮点 |
妻が1人で安全に移動できるよう、ホームエレベーターを設置。開き戸を開ける際にバランスを崩しやすいので引き戸とした。歩行用装具がひっかかりやすいので、慎重に段差を解消。将来、1階で車いすでの生活が可能なように計画。 |
| ポイント |
a 開き戸は引いて開ける際にバランスを崩しやすく危険だったため、全ての戸を引き戸にした。また、つたい歩きの際、戸に手をかけるとかえって危険なため、戸袋を造作した。建築主の希望により手すりを設置。将来、車いす生活になった場合は手すりを取り外せば通行、転回可能な幅を確保。
b 当初車いす対応型エレベーターの設置を検討したが、建物の構造上、床を開口することが難しかった。建物の補強にかなりの費用もかかることから、ひとつ余る階段空間を利用して、小型のホームエレベーターを設置。エレベーターには階数表示がないが、1階のインテリアを明るい木の色調、2階を既存に合わせダークな木の色調に分ける事により、到着階を認識できるよう配慮した。
C 妻が身の回りのことをひとりで安全に行えることを目的としたリフォームのなかで、寝室から入れるトイレは当初からの希望だった。来客用は2階にあるため、夫婦専用のトイレとして2ウェイとした。将来の加齢に備え、十分な広さと拡張性を持たせた。体調の悪いときは身の回りのことが、ここで済むように洗面台も設置。予算面及び介助スペースの確保のために、脱衣室には洗面台を設置しなかった。2階の洗面所はこれまでどおり使用できる。
d 手すりは理学療法士、作業療法士と慎重に検討し設置。ご夫婦ともに手すりを必要とするが、幸い身長にほとんど差がないこと、健側が同じであることで、廊下、玄関の手すりの高さは比較的決めやすかった。浴室については、既存と反対の方が、安全性が高いとされている健側から入れるようになる。原寸図面を描き、建築主にシミュレーションをしてもらった。まだ、十分慣れることのできる年齢であることから、理学療法士の意見も伺い既存と逆向きを採用した。
e 既存の浴室は、床から20cmほど上がっていた。当初同じ場所に設置する予定でいたが、解体してみると真中に布基礎があり、下げることができない。プランを練り直し、90度浴室を振って、玄関を広げることとした。玄関が広がり、窓もでき明るくなったことで、ディサービスのバスを待ったり、簡単な接客など快適空間として利用。スロープの設置については、将来、屋内車いすとなってから対応することとした。 |
| 講 評 |
3階建2世帯住宅の2〜3階に、右片麻痺、伝い歩きの妻と握力低下の夫の高齢ご夫婦と介護者となる娘さんが住んでいたが、1階居住世帯の転居により、1〜2階のリフォームを行なった事例である。二つある内階段のうち、その1つをホームエレベーター設置に活用し、広い床面積との相乗効果により、移動範囲を広げ、豊かな生活空間を作り上げている。段差解消、手すり取り付け、引き戸への変更等、各所に基本的対応を行い、さらに加齢する将来を見据えて、1階を車いす仕様にして、1階でも生活が完結できるように配慮している。OT、PTの専門職との連携も行なわれている。1階世帯の転居、二つの内階段、広い床面積等が幸いした事例であるが、いきいきした日常生活のためにデザイン的にも工夫したきめ細かな対応を評価した。 |
優秀賞
「Garden of water retentivity
〜打ち水効果で涼を得る中庭を持つ車椅子の家〜」
工学院大学 建築都市デザイン学科 谷口研究室
谷口宗彦・鯵坂誠之 |
| 概 要 |
神奈川県座間市 / 平成17年6月施工完了 /家族構成:2人(大人2人)/施工面積(うちバリアフリー施工面積):131.67u(131.67u)/
工事費(うちホームEV等工事費):2,700万円(400万円) |
| 作品概要 |
新婚所帯の住宅。この住まいは、下半身に障害を持つ若い主人と健常者の夫人の新居として計画。ご主人は自宅アトリエでガラス細工の仕事を行い、家事にも取り組み一般家庭の主婦の役割も受け持つ。従って、1階内外のバリアフリーはもちろん、ホームエレベーターも備え、2階を含めた全ての部屋へ車いすで移動可能としている。外出は改造車を利用し、自由に行動できることがこの家の配置計画を決定づけた。夫人の車を含め2台の駐車が最も簡単に、しかも天候に左右されることなくできることが条件である。ガラス張りの中庭は玄関ホールの機能も持ち、中庭にいったん入り、室内に出入りする。ガラス屋根で中庭を閉鎖的にすれば、雨風には良いが、夏の暑さや室内の風通しなど問題となる。このため、中庭の床には開発中の「保水性土舗装材」を使用。外部全面道路、歩道に敷地提供する形の駐車スペースには、床強度のある「保水性ブロック」を使用。これら保水性の床材には、夏季の暑さを凌ぐのに大きな効果がある。 |
| 要望・配慮点 |
ホームエレベーター設置(車いすでの2階へのアクセスが可能に)、車いす用改造車の駐車が容易な建物配置、
駐車場・中庭(玄関)・室内の全てにおいてバリアフリー(車いす移動が容易)、浴室・トイレに手すり設置、2段洗い場 |
| ポイント |
a 打ち水の直後から外気温より10度前後も温度を下げ、室内気温の上昇を防ぐ効果は抜群。駐車場の床は強度のある「保水性ブロック」を使用し、ブロックの隙間と脇にも小さな緑と植栽を配置し、歩道歩行者からの視線にも潤いと季節感を配慮した。
b 室内はアトリエを中心に「LDK」EVと「寝室、トイレ、浴室」を機能的に最短で配置し、出入りは引き込み戸としている。特に1階室内環境として、温水床暖房としている。従って、シリンダーコンクリート下地にタイル貼りとし、車いすの動きに最適な素材である。
C 引き戸は全て吊り戸式としたため、大変軽く開閉し、しかも開口間口は最低870o以上を確保している。門扉も軽量吊り戸としているため、車いす用改造車から、車いすへ移った後すぐに中庭、室内への移動が可能。
d 浴室は、ご主人の身体能力に合わせ、実物大の模型で移動や動作確認をして寸法確認し詳細を決定。仕事上どうしても家に閉じこもりがちになるので、リラックスできるゆとりの浴室とバスコートからの四季の変化を感じる緑の配置など配慮。
e 中庭のガラス屋根は、垂直面の下部と最も高い部分で隙間を作り空気の対流を配慮。中庭は玄関ホールの機能も併せ持ち、ガラス張りの中庭にいったん入ってから室内に出入りする。
※ プランの核である中庭は、バリアフリーであることに加え、日射、通風を季節に応じて適切に制御する空間として機能する。この中庭から室内に続く地面、床面の一部に保水性土舗装を使用することで、夏季には打ち水によって涼風を起こし、冬季には晴天時の蓄熱空間となり、一年を通じて快適な生活環境を得ることができる。 |
| 講 評 |
車いす生活者が自由に移動できるよう配慮された住宅である。ガラス張りの中庭に玄関ホールとしての機能をもたせ天候に左右されずに外出を可能としている。屋内は移動が最短となるよう普段仕事で過ごすアトリエを中心に寝室やリビングを機能的に配置し、エレベーターの設置や車いす利用に適した床材の使用、吊り戸により開閉間口を広くとる等、車いすでの円滑な移動が確保されている点を評価した。また、保水性の床材を使用することにより季節の変化に応じた快適な空間を生み出しており、全体としてデザイン性にも優れていることも特筆に値する。 |
優秀賞
「全6社の中から選ばれた住宅改修」
興産 前田哲郎 |
| 概 要 |
神奈川県座間市 / 平成18年8月施工完了/家族構成:4人(大人2人、子供2人) / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):24u(24u)/
工事費(うちバリアフリー工事費):90万円(90万円) |
| 作品概要 |
他社の計画では、和室畳をフローリングに変更し、和室の押入れの壁とトイレの壁を撤去し、そこをトイレとして使用することとしていた。しかし、そでは利用者が自分の力だけではトイレに行くことができないため、他社と同等の見積りで計画を変更し、最低限の工事で建築主の生活の幅を広げた。 |
| 要望・配慮点 |
無駄な工事はせず、金額の範囲内でデザイン、利便性に配慮。残存機能を無駄にしない。また、本人だけでなく他の利用者もなるべく使いやすいようにする。 |
| ポイント |
a 脱衣場への進入はまず引き違い戸が邪魔をする。開口が550oしかないため、車いすでの進入は不可能。前社の計画では、アコーディオンカ−テンも検討していたが、築2年の住宅の見た目が悪くなり、冬場は寒いので却下。また、脱衣場では洗濯機が邪魔をして中で回転できないので、介助者が車いすを引いて脱衣場へバックで入る方法が予定されていた。しかし、スペースがあれば本人は自立できることから、洗濯機と洗面台の位置を移動し、浴室入り口前にスペースを確保。
b 浴室の中では移乗台を使用して入浴することが検討されていた。動線を短くし、健常者も無理なく使えるよう、折れ戸の吊り元を変えてドア位置を変更し、移乗台は当初浴槽側に設置を予定していたが、壁側へ変更。
C 和室は建築主の要望により、畳からフローリングに変更。予算を抑えるため、フローリング材にえんこう板を使用。これにより、壁、天井、ふすま等を一切変えずに部屋の雰囲気を保つことに成功。出入口は開き戸なので、自分でドアを開くことができないため引き戸に変更。既存ドア位置はそのためのスペースがないので、押入れ前のスペースを利用して吊り戸を設置。
d 室内への出入は和室外の犬走りを撤去し、昇降機を設置。
e トイレは奥行きが狭く車いすで進入したとしても、扉が閉まらないので奥行きを広げることを計画。既存扉が開き戸で開口が580oしかなく引き戸に変更するスペースがないため、引き込み戸を計画。和室の扉を変更したことにより、和室入り口前にスペースができたのでそこを利用。 |
| 講 評 |
戸建住宅において介護保険及び障害者保険の制度を利用した典型的な住宅改修である。基本姿勢は車いす対応、家全体を改修に向けてオーソドックスな形で目配りをした様子が各所に見られる。洗面脱衣室の入り口はともするとアコーディオンカーテンにしたいところだが、プライバシーを重視し三枚扉にしたのは賢明と思われる。洗面化粧台も新しいものに変えず、下の扉を取り車いす対応とし、高さを下げたことで鏡が見やすくしたことは最低限の改修費用というテーマに叶っていると思うが、洗面器の高さを低くしたことがご家族の方たちに適した高さだったのかが気がかりである。また、両下肢体幹機能障害と小判型(身体障害者用)便器の関係についてコメントが欲しかった。その他各所で建築主の気持ちに配慮して丁寧に改修提案をして実行しているところが嬉しい。「無駄のない工事、デザイン性と利便性に重点を置いた、家族のことも考えた」という当たり前の姿勢を評価したい。 |
優秀賞
「快適シニアライフ」
三井ホームリモデリング株式会社 代表取締役社長 萩原誠 |
| 概 要 |
東京都渋谷区 / 平成17年11月施工完了/家族構成:1人(大人1人(うち高齢者1人))/ 施工面積:67.5u/
工事費:約1,950万円 |
| 作品概要 |
60代の建築主が新築時より暮らす築30年のマンションを将来に備えたバリアフリー空間に全面改装。水周りの配置を見直してゆとりあるスペースを確保し、居室を含め室内の段差を解消した。ベッドスペースのみ可動間仕切りを設けたフレキシブルなワンルームの居室は、将来のさまざまな状況に対応できる。もっとも快適かつ明るい南面に趣味のアトリエを配し、玄関ホールには作品を飾るギャラリーを設けるなど、心置きなく趣味を愉しむ住まいとなった。 |
| 要望・配慮点 |
水回りスペースのバリアフリー化。趣味を愉しむスペースの充実。明るく風通しのよい住まい。 |
| ポイント |
a 水回りのレイアウト変更と段差解消:間口の狭いドアを開くとすぐ23cmの段差があった水回り。車いすはもちろん介助のスペースもなく、将来的に不安を感じていた。レイアウトを全面的に変更。既存トイレ、洗面の位置に浴室を移すことで洗面脱衣室のスペースを広げ、トイレも一角に組み込んでゆとりある空間とした。ホール側に移した入り口は、有効開口750oの引き戸とし、廊下との段差も解消した。
b バリアフリーの設備機器を採用:設備機器は全て一新。浴室は、レイアウト変更によりバリアフリー仕様のユニットバスを設置。メイクアップをされる洗面化粧台は腰掛けるタイプ。トイレは建築主の要望により、両側に手すりを取り付け。システムキッチンはニースペースのあるタイプとした。
C 可動間仕切りによるフレキシブルなワンルーム:廊下から一段下がっていたリビングダイニングは、建築主が気にされていた階下への防音対策も施しながら床レベルをあげてフラットに。LDKと寝室、アトリエは開放的なワンルーム。ベットスペースを仕切る可動間仕切りは床にレールのない吊り戸の障子。光と風を部屋全体に呼び込み、また、様々な状況にもフレキシブルに対応できる。キッチンはLD寄りに移して家事動線を短縮。友人と料理を作りながら集う場でもある。
d 収納の確保:大きな額や書籍、掃除機などは既存キッチンのスペースに集中収納。寝室やアトリエなど各コーナーに必要な収納を造り付け、床面に物があふれないようにした。
e 自然素材に包まれて:壁は淡いピンクベージュの漆喰、天井は調湿効果のある珪藻土、床は無垢の桜材。自然素材が心身を優しく包む、どこか懐かしい空間に、ステンレスの障子でモダンなテイストをプラスした。 |
| 講 評 |
築30年の住宅の室内段差をリフォームにより無理なく解消している。加えて、水回りはレイアウト変更によりゆとりあるスペースを生み出し、居室部分については防音対策がなされるなど建築主の要望に対応した施工がなされている。また、キッチンの配置変更による家事動線の短縮や、可動間仕切りによるフレキシブルなワンルームとしたことにより将来の状況変化に対応できるよう配慮している点を評価した。自然素材を床や壁等に使用し趣味を愉しめるどこか懐かしい空間を生み出している点も特徴的である。 |
ベターリビング賞
「43年間待った 癒されるサニタリー
リフォームして初めて知った快適空間」
East住環境 小西博子 |
| 概 要 |
東京都世田谷区 / 平成18年1月施工完了/家族構成:1人(大人1人(うち高齢者1人)) /
施工面積(うちバリアフリー施工面積):9u(9u)/ 工事費(うちバリアフリー工事費):2,352,000円(2,352,000円) |
| 作品概要 |
築42年になるマンションの浴室および水回りのリフォーム
糖尿病を原因とする障害が膝にあるため、家事動線をトータルに考えた改修
浴室、洗面、廊下、隣室押入一部の空間をワンルーム(5.5u)にすることにより、将来性、広さ、安全、そして快適で美しいサニタリースペースの創出
水回りの様々な段差を1箇所にまとめた
180mmあった段差を在来工法で100mmまで縮めた |
| 要望・配慮点 |
10年後も安心して使える快適で美しい浴室に改修。
浴槽またぎ高さを700mmから430mmにするために在来工法とした。
水回り配管スペース確保のための段差をサニタリー出入口1箇所、100mmとし、手すりを設置することで転倒予防及び安全に配慮した。 |
| ポイント |
a 浴室・洗面器台・シャワー水栓金具:既存の浴室防水を傷めないように浴槽を埋め込み、またぎ高さを430mm以下とした。シャワーチェアー用の洗面器台を人口大理石で設置(H=400mm)。洗面台は、座位での浴槽入浴時に移乗台として使用できるように配慮。手元での吐水、止水ができるスイッチ式シャワーヘッドを設置。シャワーヘッドの位置を自由にできるシャワーフック兼用手すりを設置。指がかかりやすく使いやすいレバーとサーモスタット付き水栓金具を設置。
b 浴室壁:コストを抑えるために、床より700mm上部は既存の壁タイルのままとした。新設の下部タイルは、羞明(糖尿病によるまぶしさ)を考慮し、つや消しのタイルを張った。窓のない浴室の圧迫感を少なくするため、建具はアクリル引き戸として光を透過させた。
C 浴室・洗面脱衣室・トイレ部分床:空間に広がりを感じるように、浴室、洗面脱衣室、トイレ床をサーモタイル(滑りにくく、タイルの冷たさも緩和)張りとした。浴室と洗面脱衣室の水仕舞いは、建具段差200mmとし、その段差はタイルのミニスロープと床の水勾配をとることで解消。洗面脱衣室及びトイレの床はタイル張りになっているため水に強く掃除しやすい。
d 洗面・洗濯スペース・トイレ:洗面キャビネットは、座って洗面動作が可能になるように下部をオープンとした。十分な収納と使い勝手の良さを考えてオープン棚のトールキャビネットとランドリーキャビネットを設置。狭くて危険なベランダにあった洗濯機を、洗面キャビネット横に設置(冬場でも安心)。トイレは既存の便器を使用し、温水洗浄便座のみを交換し、棚つきの手すりを設置。トイレ建具を撤去したことで、ゆとりのある洗面脱衣空間となった。玄関からサニタリーが見えないように、圧迫感のないかすみガラスの引き戸を設置。
e 水回り段差:このマンションの場合、居室全体をかさ上げする以外に浴室段差を解消することができない。そのため、浴室やトイレの出入口段差を1箇所にまとめ100o(杖歩行、歩行器歩行時にもおおよそ乗り越えられる範囲)の段差とした。ここでの転倒を防止するため、玄関側、サニタリースペース側どちらでも使えるように出隅スペンサー手すりを設置。 |
| 講 評 |
集合住宅(RC造)の水回りの改修では築年数が経過しているほど設備配管と水勾配との関係を解決することは構造的に難しい。隣室の格納部分の一部を取り込んで玄関ホール側からのアプローチとの取り合いを区画し段差を一箇所にまとめ、なお、一般的な考え方ではユニットバスに置き換えるところを在来工法のままとしたことが建築主の感覚を大事にしたところではないかと推察される。建築主のコメントとして「不自由な銭湯通いをしなくて済む」「快適でおしゃれな空間」「43年の奇跡」という言葉がそれを証明しているのではないか。世田谷区の制度を利用しながら、建築主が喜んでもらえるような改修をしていることを評価したい。 |
東京建設業協会賞
「つくばの家」
アーキファクトリー一級建築士事務所 山本邦史郎・八木雅子 |
| 概 要 |
茨城県つくば市 / 平成15年7月施工完了/家族構成:3人(大人2人、子供11人) / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):124.66u(61.98u)/
工事費(うちバリアフリー工事費):10,100,000円(8,543,880円) |
| 作品概要 |
この計画は、ハウスメーカーによる「特殊鉄骨構造プレハブ住宅」という極めて特殊な構造条件をもつ住宅のバリアフリーリフォーム。認定製品の特殊工法であるために構造的改修は難しく、改修費用も高額になることが予想されるため、改修範囲は主に内部改修に限定された。そこで、@構造ユニットの接合点では4本の構造柱が集まり、その柱を隠蔽するために壁厚40cm近くの未使用空間がある、A木造よりも大スパンが可能(柱以外の制約が少ない)という特徴を生かすことで、最小限の工事範囲の中で、開放的であり、暮らしやすく、経済的なリフォームが可能となった。 |
| 要望・配慮点 |
建築主の要望は、できる限り現在残っている能力を生かした自立生活の継続と家族の介護負担の軽減、そして住宅が本来持つ機能である「快適性」「機能性」や「癒し」などの充実という「家全体・家族全体」を視点に置いた総合的なバリアフリー改修。 |
| ポイント |
a 玄関・ホール:段差解消について、杖と左足装具の使用で自立歩行できることを重視して、スロープ設置ではなく、歩行距離が短くてよい階段を改修した。手すり及び装具着脱用のベンチを設置し、1つの段差を15cm以内とするため段数を増やした。段板は、防滑性、転倒時に柔らかいもの、コスト、意匠性を考慮して、デッキ材を採用。臨時の車いす使用時は、レンタル福祉用具の置くスロープでアクセス可能。ホールには、回転スペースを確保。
b 寝室:生活動線と有事の避難を考慮して1階に計画した。ホールと家族室との間仕切り上部をガラスとしたことで開放的な空間となっている。家族室との間のガラス引戸開閉により、家族の気配を感じられたり、区切って静かに休んだりできる。趣味の読書を続けられるように、蔵書を収める壁一面の本棚を作った。リハビリ用手すりを設置した。
C 小便所:使用頻度の高さと、誰かが便所と一体の洗面室を利用している場合を考慮して、独立した小便所優先順位の高い要望だった。洗面室、キッチン周りのプラン変更によって、既存パイプシャフトを利用でき、寝室や家族室の近くに確保することができた。最小限の広さではあるが、体制の保持や掃除の手間の点から使いやすいスペースになっている。掃除のしやすい素材、塗装、汚れの目立ちにくい色の仕上げを採用。
d 単一空間の機能ごとだけではなく、2室にわたり多方面からの検討でスペースの有効利用が可能になった(断面図参照)。洗面室側に、洗濯機1つ分のスペースが生まれ、入浴介助がしやすい空間になった。壁の突出物は設置の有無を含めて作業療法士に意見を伺い、折畳みベンチ、車いすに対応できる洗面カウンターを設置した。使いやすい手すりの取付け位置は、状態の進行、介助方法によるため、追加取付けできるように壁全面に下地を入れた。温熱環境も考慮し、暖房機能付きの浴室換気扇、洗面室に後付暖房用電源を用意した。
e 家族室・ウッドデッキテラスまわり:歩行のしやすさや車いすの使用を考慮して、有効開口800mmの引戸へ改修し、収納家具を置かなくて良いように壁面に造作収納を設置した。FL±0の高さのテラスを新設し、出入口を下枠フラットサッシに改修した。常時車いす使用になった時は、テラス横に段差解消機の設置を想定し、スペースと外部電源を用意している。家族室の床フローリングは、足ざわり、防滑性、転倒時柔らかいことを考慮して、ウレタン塗装ではなく無垢材をオイルで仕上げた。 |
| 講 評 |
ハウスメーカーのバリアフリー化は、各メーカーの構法の制約がありいろいろと配慮しなければならない点が多々ある。この作品においても「特殊鉄骨構造プレハブ住宅」という極めて特殊な構造条件(設計主旨より引用)下の基で、建築主の要望にこたえたものである。結果として、室内に構造体である柱部分が独立した形で現れてはいるが、当然建築主の了解を得ているであろうし、意匠的にも工夫されているので良しとしたい。建築主の基本的な要望を良く理解し、制約条件の多いなかで施工を行ったことを評価した。 |
東京電力賞
「使いこなしたい気持ちになる、
おしゃれなバリアフリーキッチン」
三井ホームリモデリング株式会社 代表取締役社長 萩原誠 |
| 概 要 |
岐阜県安八郡 / 平成18年9月施工完了 /家族構成:2人(大人2人)/ 施工面積:9u/ 工事費:約460万円 |
| 作品概要 |
数年前交通事故により車いす生活となった奥様のためのキッチン。いわゆる「障害者用」キッチンには抵抗があるとのことで、部材型システムキッチンをデザイン性を重視しつつ車いすで使用できるよう構成した。車いすでの動作・回転スペースの確保とキッチンボックスの強度、ご主人と共通に使うための高さ設定等々、メーカーの理解を得て問題をひとつひとつクリア。「自分を甘やかさない」とのご希望で、設計当時は困難だった動作が必要な箇所もあえて設けている。キッチンをリハビリの励みとされ、快適に使われている。 |
| 要望・配慮点 |
車いすで調理、配膳ができ、デッキにも自力で出られる。誰が見ても素敵なデザイン。あえて努力が必要な動きも取り入れる。 |
| ポイント |
a キッチンから食卓まで続くカウンター:車輪を両手で動かす車いすでは、物を持っての移動は不可能なため、キッチンから食卓まで一続きのカウンターとすることが絶対条件。現状のスペースから必然的に南側のダイニングテーブルに続く南北に長いL字型のレイアウトが導きだされた。キッチン内に車いすの回転スペースを確保し、L字のコーナーはキャビネットを置かずカウンター下をオープンにすることで、自立した作業を可能にした。IHの右側にもカウンターを設け、卓上型魚焼きグリルや収納を配した。
B あえて厳しい動作を要求:「自分を甘やかしたくない」とのご希望もあり、身体を支えやすいコーナーを中心に、あえて困難な「立ち上がり」が必要な収納等を設けた。そのため、カウンター下部に車いすが入る空間をとりつつ、体重の荷重に耐える強度を確保。L字長手方向は奥行きを十分にとり反対側から使うキャビネットを配置することで強度を確保し、通常の奥行きとなるIH側のコーナーは荷重に必要な最低限のボックスの奥行きを割り出してもらって設計。
C ご夫婦共に使いやすい高さを検討:バリアフリー仕様のシステムキッチンでシミュレーションしていただき、使いやすい高さを確認するとともに、健常者であるご主人の使い勝手も考慮して、カウンタートップ高さは760oとした。
d 設備・収納:安全性の高いIHクッキングヒーターを採用。シンクは車いす仕様の浅型タイプを苦心して入手し、食器洗い機もビルトイン。さらにカウンター上に水切りラックを置きたくないとのご希望により、シンク上部に電動昇降式の水切り棚を設置した。大きなゴミ箱を置くスペースがないので、分別用にキッチンシューターを2つ設けゴミは外部のデッキに。
e 明るく、戸外へもつながる:レイアウトの関係上キッチンの勝手口を塞いだので、東側にハイサイドライトを設けて明るく。また、デッキをダイニング側に延長し、大きな掃き出し窓から一人で戸外に出られるようにした。
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| 講 評 |
障害特性を考慮し、限られた既存のキッチンスペースの利用で、食卓への配膳の動線や車いすの回転スペースを配慮したレイアウト、加えて魚焼きグリルや電動昇降式水切り棚、IHクッキングヒーター等の電化製品を活用し機能性を向上させた点、単なる調理台ではなく「立ち上がり時」の支えとしての強度を確保した点、そして、タイトル通りに「思わず使ってみたくなる」キッチンと「外へも出てみたくなる。」デッキの『心のバリアフリー化』も後押しするようなデザイン性を評価した。 |
住宅金融公庫賞
「オーベルグランディオ萩中新築工事
(萩中住宅マンション建替事業)」
株式会社 長谷工コーポレーション エンジニアリング事業部
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| 概 要 |
東京都大田区 / 平成18年3月施工完了 / 施工面積(うちバリアフリー施工面積):48,801.38u(約4,100u)/
工事費(うちバリアフリー工事費):約81億円(約8,000万円) |
| 作品概要 |
萩中住宅は、1968年に建てられた5階建て8棟368戸の集合住宅だったが、老朽化が進み建替えの必要性が生じ、約13年の歳月を経て2006年3月に首都圏最大規模の建替事業として18階建て2棟534戸の集合住宅に生まれ変わった。
「新しい住環境の創造」を目指し、総合設計制度、21世紀都市居住緊急促進事業、優良建築物等整備事業等の制度を活用し、「福祉のまちづくり」にも配慮して、計画地周辺に安心・安全なオープンスペースを持つ緑あふれる住空間が実現した。周辺地域の環境整備にも貢献している。 |
| 要望・配慮点 |
建替えの地権者の大半を占める高齢者のために、極力段差をなくしてスロープ等で処理したり、各所に手すりを設置するなど、バリアフリーに配慮した設計・施工となっている。 |
| ポイント |
a エントランスの風除室の扉は2箇所とも自動ドア(引き戸)とし、床も滑りにくい仕上げとした。車いす用の受付カウンターをエントランスホールに設置。入り口からオートロックインターホンや受付カウンターまでは、視覚障害者誘導ブロックを敷設。
b 共用廊下の段差をスロープで処理。共用廊下に補助手すり(h=750)を設置(スロープ部分含む)。
C 5基のエレベーターのうち3基を身障者用とした。共用部に身障者用トイレを設置。
d 住戸玄関ドアには操作性の良い、プッシュプルハンドルを採用。住戸玄関、廊下に手すり取り付け用下地を設置。住戸内部のスイッチは押しやすいワイドスイッチを採用し、取り付け高さも子供たちに使いやすい約1mの高さに統一。コンセントの取り付け高さは高齢者に配慮し、床より約40cmの高さに統一。
e 住戸の浴室には手すりを2箇所設置し、浴槽のまたぎ高さも低くした。また、洗面室、浴室間の段差も解消した。トイレに手すりを設置。洗面化粧台には、操作性の良いシングルレバーハンドル水栓を設置。
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| 講 評 |
約40年前に建てられた分譲マンションの建替事業であり、居住者による合意形成、周辺住民の理解等、着工までのそれぞれの段階で、居住者と地域住民、行政、デベロッパーによる協調と協力の体制で、各種の事業制度を活用し、13年間の歳月をかけ、最近、竣工にこぎつけた事業である。各住戸の高齢者対応、共用部分にみられる障害対応もきめ細かく行われている。さらに、充実した外部空間等を公共に開放し、社会的視点からも総合的なバリアフリー対応として評価できる。今後、増加が予測される老朽マンションの建替に対して、ひとつのモデルになることが期待される事例である。 |
特別賞
「北区 O邸」
株式会社大起エンゼルヘルプ 宮本奈緒子 |
| 概 要 |
東京都北区 / 平成18年7月施工完了/家族構成:1人(大人1人(うち高齢者1人))/ 工事費:4,500,000円 |
| 作品概要 |
建築主は骨折のため手術をし、リハビリ後、歩行器での移動が可能となった。娘さんは週1回程度しか来られないため、基本的に自分で身の回りのことができるよう、生活に必要なスペースを重点的にリフォームした。予算が決っていたため、段差解消や安全性に関しては優先的に工事を行った。 |
| 要望・配慮点 |
歩行器で家の中の移動ができるように、段差をなくし、家事が一通りできるような環境を整えることを目標にリフォームした。 |
| ポイント |
a 外出時も歩行器を使用するため、玄関入口のコンクリートポーチとアプローチの石の段差が問題となっていた。緩やかなスロープとし、玄関から門扉近くまではり出させて手すりを設置。
b 玄関段差420mmを上がるために踏み台を正面向きに置くことはスペースの問題が生じるため、下駄箱を撤去して横向きにオーダーで製作した手すりつきステップ台を設置。1段が140mm程となり無理なく足があがる。
c 500mmの床段差解消。建築主は入浴時に介助がないので安全のためシャワーのみを希望。入口にグレーチングを設け完全に段差を無くし、3枚引戸で開口を広くとり、手すりも入口からどの場所にいてもつかまれるように取り付けた。冬の寒さに気を配り、浴室暖房を設置。冷たさを感じさせないよう、浴室の床はコルクタイル、脱衣所はコルクとした。シャワーはいすに座るだけで身体全体を洗えるシャワードバスを取り付け。
d 長時間立っていることが難しいため、いすに座って作業できる仕様のキッチンを選び、コンロや壁などは掃除が簡単なもの、魚グリルは両面焼き等なるべく手間がかからないよう普段の生活を意識した。
e 玄関、廊下、キッチン、居間、納戸、浴室、トイレ間のすべての段差を無くし、歩行器での移動ができるようにした。
f 納戸には食品などが置かれているため、毎日出入りがある。よく使用する部分のみ段差を無くし、落下防止をかねて手すりを設置。踏み台も置いてある。
g 開口を広く確保するため、片面引手、片面取手の仕様。両方取手だと開口が狭くなり、両方引戸だと開口は広くなるが、戸を引き出しにくいので、壁に面する側は引手、もう一方は取手とし、戸全体が引き込まれても裏側の取手で引き出せるようにした。
h 洗濯干しも段差なく、竿に手が届くけば安全に干すことができるという事で、物干し台の高さは一般的なものよりかなり低く取り付けた。 |
| 講 評 |
高齢者にとって、長年の生活習慣の継続と自身で身の回りの動作が行えることは、心身の健康維持のために特に重要と考える。当作品は、「車輪付収納イス使用のキッチン」、「物干し台の高さも考慮した洗濯干し場の新設」、「毎日利用の納戸のバリアフリー化」等、現在の施主の身体能力を十分に活用して受傷前と同様の生活ができるように、細かな工夫がされている点に加えて、「トイレ照明の人感センサー・床材、浴室の暖房」、「掃除が簡易なコンロ・キッチン壁の使用」といった高齢者の方が安全・快適に生活できる配慮がされている点を評価した。 |